2011年6月20日月曜日

年寄りの冷やウイルス


 出版社にメールしたら、「ウイルスチェックに引っかかりましたよ。やられてませんか」と返信があった。聞けば、バイアグラかなにかの添付書類がくっついていたという。むろんそんなものに覚えはないから、「こいつはやられたか」となった。

 もともとマックだから、アンチウイルス・ソフトなんていうやっかいなものもなしで、無防備のまま10年以上になる。マックといえども100%安全というわけではないそうだが、ウイルスやワームのほとんどは、数の多いウインドウズが標的だから、とたかをくくっていた。

 この間。知り合いからのメールに、妙な添付書類がついていたこともあったし、「なんだろう」と突っついちゃったこともある。一度だけ、自分から自分へのスパムメールが出たことがあって、さすがに「ワームかな」と思ったりもしたのだが、結局何事も起らなかった。

 今回奇妙なのは、同じようにメールを出している他の人たちからは、何ら不都合の指摘がないことだ。マック使いの1人に聞いてみたが、なんともないという。彼は「念のために調べた方がいい」と、無料のウイルス駆除ソフトをダウンロードできるサイトを教えてくれた。

 懇切丁寧に、ダウンロードの仕方も解説してくれたが、こいつが何よりやっかいだ。文字列がゾロゾロと並んでいるのを、ああしろこうしろとある。見ただけでうんざりしていたら、追っかけてメールで、「ワームがみつかった」という。私が感染源という口ぶりだ。ただ、日付は3月11日で、その頃私のメールは出ていない。彼の受信記録でも、心当たりはないという。はて?

 とにかく最近のウイルスやワームは、一段と悪質になっているのだそうだ。訪問者の多いサイトの入り口に網を張って、訪問者に取り付いてもすぐに悪さをするでもなく、あるとき突然、サイバー攻撃の手先にされてしまったりするのだという。

 私みたいな年寄りは、もともと警戒心が薄いから、それでも気づかない。捜査の手が及んでも、「エーッ?」というばかり。テレビの報道で、そんなお年寄りを見たことがあった。が、そのときも「オレはマックだから大丈夫」と安心していたものだ。

 しかし、どうやら尻に火がついてきた。意を決してダウンロードをやってみると、な~にややこしいこともなくスラスラとダウンロードできて、文字列のお世話にもならずに、勝手にウイルススキャンを始めた。なんと便利なものよ。

 まず「デスクトップ」は大丈夫。ついで「書類」という文書と写真のファイルをやったが、これもセーフ。そこで、コンピューターを丸ごとやってみた。さすがにこれは20分以上もかかって、なにやらコトコトやっていたが、出てきた結果は「No infected files were found(汚染ファイルなし)」だった。なんのこっちゃ。

 この旨を友人に伝えると、彼もワームの元を突き止めていた。中国からのビジネスメールに取りついていたのを、プロバイダーに報告するつもりで隔離しておいたのだが、その後入院したりしてけろっと忘れていたのだという。「あなたの疑いは晴れました」だと。何をいうてけつかる。

 まあコンピューターとは便利なものである。ややこしい文字列なんかわからなくても、文章を書いて、メールして、写真を処理して、保存して、ニュースや専門サイトの情報も読める。お陰で年寄りでも、昔よりははるかにお手軽に知的な時間と空間を、つまり余生を長持ちさせることができる。考え出した人はたいしたものである。

 ところが、ひとたび予期せぬクラッシュやウイルスに見舞われると、もうお手上げだ。マニュアルを読んでも、何が何だかさっぱりわからない。あとは誰かに聞くしかないのだが、これがなかなか見つからない。マックとなれば、ますます少ない。

 考えてみれば、わたしのマックもすでに四代目で、二代目まではいまのに較べたらまあ、おもちゃみたいなもので、三代目はまだかろうじて動いてはいるものの、ソフトがもう時代に合わなくなった。

 ありがたいことに、件の友人はこの間ずっとトラブルシューターをつとめてくれている。そういう人が身近にいるだけでも幸運である。彼の話によると、救いの手を差し伸べる人も大勢いて、お助け情報はネットにちゃんとあるのだそうだ。

 今回お世話になったウイルス駆除ソフトも、そんな誰かが考え出したものだという。世の中よくしたものだ。こういう人にはノーベル賞をやりたいくらいのものだ。むろんウイルス野郎は死刑である。

 というわけで、勇んで出版社にこの旨のメールをした。ところが、このメールにも、「添付画像をブロックしました」とウイルス駆除ソフトの表示が出たという。話は振り出しに戻ってしまった。くそったれ。といって、どうしたらいいか。

 思案しながらも、添付で別のところへ原稿を送ったりしているのだが、何ともないらしい。何ともスッキリしないのだが、そんなわけですので、みなさん、わたしのメールにはご注意ください。

 ったく、ウイルス野郎は市中引き回しの上、獄門、磔り付けじゃあ。
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 と、ひと騒ぎしたあと、結局ウイルスはないことがわかりました。ご安心を。

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