2010年5月14日金曜日

ツイッターがわからねぇ



 メールは普通に使っている。mixiにも参加して、ブツブツいったり、写真を載せたり、ついにはブログとやらにも手を染めることになった。必要から You Tubeにも関わった‥‥まあ、年寄りとしては精一杯やってるつもりなのだが、最近しきりに出てくる「ツィッター」というヤツ。これがよくわからない。

 英語の「さえずり」という意味なのだそうだ。「いま何をしてるんだ」「こんなことがあったよ」といった個人のつぶやき。そんな、どこの何者かもわからない人間のさえずりに目を通すなんて、それでなくても老い先短い身には時間は貴重なのだ‥‥まずはこれだった。

 ところが現実は大いに違うらしい。短いつぶやきに、実に多くの人が目を通していて、反応する。それがまた、次々に伝搬していって、しばしば「こちらの世界」の動きになっているのだと。「世の中、そんなにヒマ人が多いのか」というのは、どうやら「置いてかれた世代」のたわごとであるらしい。

 鳩山首相がツィッターを始めた、と聞いて、「何をまた、お調子者が」と思ったものだが、その書き込みを読んでいる人間(フォロワーというのだそうだ)が60万人と聞くと、あらためてただ事でないと思ってしまう。そんなメディア、いままでなかった。

 例の事業仕分けで、You Tubeの画像と一緒にナマ中継したのがいる。むろんツィッターの方は細切れだろうが、全ては生データだから、重ね書き全体を見れば立派な「記録」プラス「世論調査」である。また、政府の審議会かなにかで、刻々と書き続けた例もある。これは、会議が終わったとたんに、非公式議事録になってだれでも読める。

 とにかくリアルタイムで双方向、伝搬のスピード‥‥どれをとっても、既存のメディアでは、逆立ちしてもできないことだ。これがいまや、政治家、自治体、地域の商店街から吉本興業の芸人たちにまで及ぶらしい。新聞までが始めていて、ツィッターの試行の結果を紙面に載せたりもするという。いったいどうなってるんだ。

 ツィッターは「140文字以内」という制限がある。これがいいという。たしかにネットでは、800字を超えると「長い」という感じになると聞いたことがある。にしても、140字では短かすぎないか? いや、だから気軽に書き込めるんだという。話が煮詰まれば、短くても中身の濃いやり取りは可能だと。なるほど。

 もうひとつは「バケツリレー」だという。「こういうことがあったよ」「だれかがこんなことをいってる」と、情報を右から左へ転送、あるいは引用する。すると、とんでもないところで、ひっかかりが出てくるというのだ。

 衛星テレビが蓮舫議員の声をとりたいと思ったが。秘書と連絡がとれない。そこでツィッターに書き込んだ。するとフォロワーからフォロワーを経て 2時間後に、九州かどこかにいた当人から連絡が入ったそうだ。従来は、探しまくるしかなかった。それが、ツイッターに書きっぱなしで、他の仕事をしていられる。考えられないことだ。

 この右から左というのは、ブログにもあるらしい。それを聞いた時むしろ「何のためにそんなことを?」「だれが読むんだ?」といぶかったものだ。これがツィッターだと、そういうメディアなのだという受け止めにはなる。ただ、なんとなく腑に落ちない。

 南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太が、レギュラーの番組を休んだとき、放送を観ながらツィッターで突っ込みを入れた、という話があった。メディアの新たな使い方として注目されたというのだが、いったいだれが、テレビを観ながらツィッターを読むんだ? アブナイもいいところ‥‥。

 それ以上に、危うさに慄然とした。お笑いの突っ込みなら毒にも薬にもならないが、これがネガティブな、あるいは悪意のあるニセ情報だったらどうなるか。ウソでも大勢がくり返し叫んだら本当になりかねない。

 今度の参院選では、ネットでの選挙運動が認められるという。が、ブログとHPの書き換えができるだけで、ツイッターはだめだという。まあその方が無難だろう。しかし、個人のつぶやきは選挙運動ではないのだから、もともと規制のしようがない。

 勝手連にもなるだろうし、アンチにもなりうる。もし投票の1日、2日前に妙な「つぶやき」が流れたら‥‥それが本物かどうかの判断もできず修正も追いつかないまま投票になっても、結果は動かせない現実のものになる。これはおそろしい。

 現に、昨年の衆院選で民主党のサイトに無関係な書き込みが集中してサバーがダウンしたそうだ。ある種の「意図」が感じられる。まだツィッターは使われなかったが、ツィッターならもっと大きな力を発揮するだろう。

 全国の選挙区・比例区で、これが起こったらと思うとぞっとする。影響を推し量ることすらできない。たとえ事前の世論調査と投票結果とが大きくズレても、検証すらできまい。

 先頃、福岡の複数の高校が「ツィッター禁止の校則をつくった」という偽情報がツィッターを駆け巡った。メディアが問い合わせて、1日で「ニセ」とわかったが、これが問い合わせできない類いの情報だったらどうなる?

 次の参院選が、「悪しきツイッター元年」として歴史に残らないよう祈るしかない。ツイッターはまだまだ要注意だ。