2011年3月15日火曜日

テレビの前で原発レッスン


 偉い先生方が、繰り返しテレビで解説してくれると、福島第一原発の原子炉の仕組みをわかっちゃったような気になる。しかし、なんかおかしい。素人でもおかしいと思うのに、先生方が案外平気でいるのがわからない。

 その第一は、バックアップのジーゼル発電機が働かなかったことだ。自動停止した原子炉の冷却過程で必要な電源だという。冷却できないとどうなるかは、素人にだって見当がつく。

 詳細はわからないが、津波にやられたのが「想定外」だったという。しかしジーゼル発電機の造りはどれも似たり寄ったりだろう。つまりは、水没したとか燃料タンクが流されたとか、いってみれば単純な理由で動かなかったのだろう。ただ、バックアップのバックアップがなかった。町工場じゃあるまいし。

 冷却システムの電源というのなら、ほかの発電所からもってこられなかったのか。電気屋なんだから。さらにいえば、いっそ停止した原子炉を再起動させたら、すべてがうまく働いたのではないか。地震では無傷だったのだから。

 現場が何をやってるのかわからないままに、1号機の圧力容器(こんな言葉まで覚えちゃった)内の水位が下がった、逆に温度はどんどん上がって、内部の圧力が高くなる。それくらいは小学生にだってわかる。そしてとうとう燃料棒が顔を出してしまって溶け始めた(メルトダウン)ことがわかる。「圧を開放する」とかいってるときに、ドンと爆発した。

 この時の原子力安全保安局の発表がひどかった。爆発から2時間半も経っているのに、「詳細は確認中」ときたもんだ。そして住民の避難手続きだの安全だのばかりいっている。事実が知りたいのに、何のデータもない。つまりは東京電力が保安局に伝えてこない。しかも40分以上もの会見の間に、新しい情報がひとつも届かなかった。なめられたもんだ。

 また、記者たちのお行儀のいいこと。文句はいってるのだが、それだけだ。もしこれが30年前だったら、「保安局はなんのためにあるんだ」「すぐ東電を呼べ」とどなりまくっただろう。昔の記者は柄が悪かった。が、こんなときにおとなしい記者なんていらない。

 直後の官房長官の会見で、水素爆発だとわかった。格納容器の外で、吹っ飛んだのは建屋の天井と外壁だと。放射性物質の放出はなかったとする一方で、周辺住民の避難の指示が出された。あくまで、念のためみたいなことだったが、避難の過程で、被爆と汚染が確認された。どこから漏れたんだ?

 この水素爆発もわからない。炉心に水を注入すると、水の中の酸素が金属と反応するから、水素だけが残るという。しかしそれは圧力容器の中のはず。どうやって建屋のなかにまで出てきたんだ。学者先生も「どうしてでしょう?」。おいおい、

 1号機にはついに海水を注入することになった。多分おしゃかにすることになるらしいが、今日(14日)は3号機が爆発した。これも1号機同様に水の注入がうまくいかず、メルトダウンの兆候を示していた。こんどは東電が会見したが、これがまたひどいものだった。

 もう水素爆発はわかっているとして、まずはけが人が3人出ていて、救急車で搬送云々。つぎに「パラメーターがどうとか」と数字を並べて、ひとしきり安全を強調したあとで、「行方不明が7人出てます」と平然といってのけた。「エーッ」である。

 自衛隊員6人とプラントの作業員1人だという。救急車で運んだのは東電の社員2人と協力会社の1人。「こいつら、人間をなんだと思ってんだ」と柄悪くいったのは、テレビの前のわたしだけで、会見場の記者たちは、だれ1人これに噛み付くものはいなかった。

 さらに聞くと、水素爆発というのも、周辺の放射性物質の測定値が変わらないことからの推測で、まあ、それは正しいとしても、建屋の中の格納容器の状態というのも推測だった。つまり、だれも目で確認してはいないのだ。

 水が入るも入らないも、圧力を逃がすのもなにもかも、全ては安全な制御室からの遠隔操作。人間がワザを使ってどうこうできるものではない。これはおそろしいことだ。機器のソフトが狂ったら、また配管などにミスがあったら、どうにもならないではないか。過去の事故はみな、そんな話だった。

 現に、圧力容器内の水位を示すゲージは正しく動いてはいないらしい。水はもういっぱいのはずが、メーターはそうなっていないと。遠隔操作では、どっちが正しいのかすらわからないのだろう。

 原子炉が静かに冷えてくれれば、それからどうにでも対処できるだろうが、とうにメルトダウンの温度になってしまっている。官房長官は、「いま冷却作業を続行中」というが、それは東電の受け売りにすぎない。その東電は、かくも頼りないのだ。

 不明の7人は幸い軽症ですんだらしい。が、防衛大臣は、社長を呼びつけて「人命に無頓着な会社に協力できると思うか」と脅しあげてもいいくらいだ。傲慢と鈍感につける薬はない。ぶん殴るのが一番である。

 これはもう、次を考えておいた方がいいのではないか。といってる間に、今度は2号機がおかしいという。理屈は同じだからもう見当はつく。わずか4日のテレビ前の座学で、素人でも、これくらいはわかるようになった。

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