2011年1月24日月曜日

案外長期政権?


 久々に舛添要一氏の写真が朝日新聞に載った。何かと思ったら、菅政権との距離が開きつつあるという内容だった。一時は入閣という観測もあったが、それが与謝野馨氏になってしまい、舛添氏はいま、改造内閣をボロクソにいってるらしい。

 ただその前の、まだ芽があった1月8日に、彼はブログで「ひょっとしたら長期政権になるかもしれない」と書いていたという。自分がその一員になってとの想定からだろうが、破れたいまは、都知事選出馬の話もあるらしいから、その見方は変わっていないのかもしれない。

 これで思い出した。山仲間の忘年会で、来年(つまり今年の暮れ)の日本がどうなっているかの予測を賭けようとなった。幹事が出した項目のひとつに「首相はだれ?」とあった。他は「円はいくら?」「東証は?」などなど。いちばん当てたヤツがみんなから1000円を巻き上げる。

 首相については、ほとんど反射的に「菅直人」と書いた。他にいないからだ。解散も絶対にない。こんなひどい状況で、民主党内に「代わりにオレが」という酔狂な人間がいるとも思えない。1年たっても状況は変わらないだろう‥‥いまや1年半も続けば、立派な?「長期政権」ではないか。

 あらためて、政治面の記事をみると、そのわずか1年先の展望すら出てこないことにがく然とする。せいぜいが、予算が通るかどうか。6月の税制改革案がどうとか。「解散」だの「ポスト菅」だの言葉は出ても、現実味がない。

 いまはもっぱら与謝野氏の変節の話だ。やれ、自民党の比例区当選なのにとか、鳩山氏が激怒している、財界人が与謝野氏の祖父、鉄幹の「六分の侠気」の詩をひいて皮肉った、などなど。

 しかし、その同じ新聞に、与謝野氏のインタビューが大きく載っていて、税と社会保障の一体改革案を語っていた。テレビでも大いに語っていて、彼が改造内閣のキーパーソンであることは間違いない。

 もともと、社会保障制度と財政再建の両立には、消費税引き上げしかない、と一貫して主張。麻生政権で、それに法的な道筋をつけた(税制抜本改革の中期プログラム)人だ。財政再建にカジを切った菅政権には、いちばん必要な頭脳ということになる。

 ただ与謝野氏はこれまで、民主党の経済・財政政策を厳しく非難してきた。だから自民党をはじめ野党は、与謝野氏の「変節」攻撃を突破口に内閣を追い詰める腹だ。また民主党内にも異論はあると、メディアはしきりに、先行きの危うさをいう。

 与謝野氏はしかし、入閣に応じた理由を「年齢だ」とはっきりいう。いま72歳だし病気もかかえているから、やりたいことをやるには、これが最後の機会だと。一方の菅首相にしたって、与謝野氏の起用そのものが大ばくちで、ある意味腹をくくっているわけだから、一世一代の大勝負は間違いない。問われるのは首相の器量である。

 今の日本の状況を考えれば、与党も野党もあるか、というのは、むしろ国民にはわかりやすいかもしれない。戸惑っているのは、政界とメディア。まだ、「変節」と「野党からの入閣」についていけないように見える。

 しかし、欧米ではこんなことは珍しいことではない。現にいまのアメリカの国防長官はブッシュ政権からの留任だ。イラクとアフガン問題が継続中だからでもあるが、代えようと思えばできたはず。代えなかったのは、それがベストだという判断だ。これに民主党内から大きな反対の声はなかった。

 経験豊かな政治記者たちも、また民主党の議員の多くも勘違いしているようだが、政権交代は何でもありなのだ。内閣の仕組みでも予算編成でも、議会の運営でも、それまでのルールにしばられることなんかない。ただ、上手にやれるかどうかは、自ずと手続きと手管と時間が必要だ。

 事業仕分けのような分かりやすいものはいいが、政府の業務のほとんどは官僚との共同作業だから、この間合いを自分のものにするのは、そう簡単ではない。これまでのところ、民主党はやることなすこと‥‥権力というものの意味、役人を動かすすべ、国内の民意と外交方針、地方との折り合い‥‥あらかたドジの連続である。その都度メディアがぎゃーぎゃーいえば、支持率が落ちるのは当然だ。

 菅首相が「仮免許」と口走ったのは、まさしくこの実感からだろう。野党暮らしから権力の中枢に入ってみての戸惑い、思わぬところをメディアにつかれる、手強い官僚、参院ではねじれで、かつてのしっぺ返しを食らう。おまけに党内には、小沢一郎氏というやっかいな虫がいる。

 では「本免許」はいつからなんだ? おそらくは与謝野入閣がそのスタートで、小沢問題にけりをつけた時点が、本格走行となるのだろう。後がないのだから、その走りっぷりは見物だ。与野党の激突も熾烈なものになるだろう。

 ただ、自民党時代と違って論争の一部始終は完全にオープンだ。どっちに理があるかは、国民の目に見える。メディアがつまみ食い報道や余計な誘導をしなければ、長期政権かどうかも、国民が正しく決められる。

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