2009年10月3日土曜日

バイト代が選挙違反とは‥‥


 まあ、選挙違反の記事が少ない選挙だと思っていたら、9月29日現在のまとめが発表された。摘発194件、逮捕111人で、前回、前々回よりかなり少ない。独立して記事になるような、重大な違反もなかったらしい。

 なかで落選候補者の逮捕が3人あった。このうち、埼玉13区の武山百合子元衆院議員のケースは、例の選挙期間中にアルバイトに金を払ったという容疑だ。このところ、選挙の都度、いちばん多く記事になる違反である。

 武山氏は、日本新党から民主党まで4期を勤めたが、前回05年の郵政選挙で落選。今回民主党は別の候補を立てたため、無所属での立候補だった。

 細川政権崩壊のあと新進党、自由党から民主党と、小沢一郎氏と行動を共にした人だから、少なくとも「小沢選挙」で3回は勝って、1回敗れているわけだ。公認漏れには、何かよほどの事情があったのだろう。とはいえ、警察は落選候補には情け容赦ない。

 埼玉県警によると、運動員はハローワークを通して雇って、選挙前には金を払ったが、選挙期間中は「覚えていない」のだそうだ。いまどきハローワークのアルバイトが無報酬で働くわけがない。

 法律の方が現状に合わないのだ。「一般の選挙運動員に報酬を払ったら買収になる」なんて法律が生きていること自体がおかしなことである。

 とはいえ法律は法律だから、警察は目星をつけて、アルバイト運動員を引っ張ってくれば、みんなぺらぺらとしゃべるだろう。何か書き付けでも残っていれば、はい、一丁上がりである。

 この公選法の条項は、ほとんど警察のためにあるようなもの。もっとも引っ掛けやすく、やる気になればいつでも摘発できるし、見て見ぬふりをすることもできる。今回、落選候補で逮捕の北海道がそうだし、後で述べる熊本のケースもこれである。

 今回公明党の太田代表を破って話題になった青木愛議員(民主)は、前回の参院選(比例区当選)で、看板を立てるのに金を払ったとして広告会社社 長らが同じ容疑で逮捕されている。指示をだしたのは、小沢一郎氏の秘書だと伝えられた。摘発した千葉県警も肝を冷やしたことだろう。経緯は不明だが、責任 は議員本人には及ばなかった。

 同じ参院選と前回衆院選では、当選した自民議員が1人づつ、その前の参院選では、民主党の2人が、辞職に追い込まれている。いずれもバイトや電話作戦に日当を払ったとして、出納責任者がぱくられた連座責任である。

 しかし、ホントに議員が辞めなければならないほどのことだろうか。払った金額だって、時給にすればコンビニのバイトと変わらない額だ。ただ法律がそれを認めていないだけのこと。

 現実には、法律の改正をしないままに、どの候補者も日当を払っているのに、払っていないという。その分の辻褄をどこかで合わせないといけない。つまり、選挙の収支報告書自体がインチキなのである。その方がよっぽど問題だろうに。

 だいいち、当選させた有権者の票の重さをどう考えているのか。一票を投じて当選した議員が、こんなつまらん法律違反で辞めるのを、選挙民はウンというだろうか。自分の一票が、たかがバイト代のために無に帰するのである。

 しかし、こうした事例で、おかしいのでは?という声をあげたメディアはなかった。ことの軽重よりも、法律に違反したかどうかだけ。今回もまた警察の発表通りに、簡単な記事で終わりだ。「法律がそうなっているのだから」というのなら、そんなメディアはなくていい。

 民主党の小沢幹事長は、国会法を改正すると語ったが、公選法の改正も視野にあるという。現行公選法には、このアルバイトの報酬の件だけでなく、 戸別訪問の禁止とか、選挙の本旨からいっておかしな規定が沢山ある。元はといえば、明治以来の「選挙には金がつきもの」という悪しき選挙観がある。

 確かに野放しにはできまいが、いまや選挙をリードするのがマニフェストで、候補者とは直接のつながりの薄い無党派層が結果を左右している現状では、大いに有権者をバカにした法律になってしまっているのである。

 こうした本質に切り込まないでいて、小沢氏が動き出したときに、後追いで解説するだけなら、下町のご隠居さんにだってできることだ。

 上記の発表には含まれなかったが、熊本県警は30日、熊本3区で比例で復活当選した民主党後藤英友氏の出納責任者を逮捕している。有罪となれば連座制で当選無効となる。今回選挙で議員のイスがかかった唯一のケースだ。

 これもまたバイト代なのだという。もし有罪、当選無効となったら、今度こそは有権者の側から、ことの軽重を問う議論を起こしてもらいたいものだ。少なくとも公選法改正を求める大きな声にはなる。メディアが寝ぼけていると、手間がかかっていけない。

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