2009年7月19日日曜日

始まった? メディアジャック


 自民党のしっちゃかめっちゃか。解散予告と造反なしの不信任案否決で、「麻生降ろし」は収まったかと思われたのが、両院議員総会の開催要求に閣僚までが署名するにいたって、何が何だかわからなくなった。

 こうなるとメディアは弱い。とにもかくにも動きを追わないといけないから、新聞は一面、政治面、社会面にどかんどかんと載るし、テレビはニュースからワイドまで、自民党、自民党である。あっという間にメディアジャック状態になってしまう。

 みのもんたがやっているTBSの「朝ズバッ!」に、「8時またぎ」というコーナーがある。午前8時をまたいで約50分、でっかいボードに4、5 項目のホットニュースを並べて、ゲストやコメンテーターがああだこうだと論ずるのだが、16日のボードは全面「自民党」だった。これはさすがに珍しい。

 とくに後半の30分は、森・元首相がナマで出演して、それはそれで面白い見物ではあった。この森さんというのは口は滑らかなのだが、ときどき口を滑べらせるので、政治部記者も目が離せない。この日も、ウラの動きをいくつかもらして、記事にした新聞もあった。

 実は「朝ズバッ!」は、前日も武部・元幹事長が出て、これもたっぷり30分、「麻生さんには徳がない」などといいたい放題。17日も石破・農水 相だったから、もう3日連続で「乗っ取られた」ようなもの。事態はまだまだ動いているから、週末をはさんでなにが起こるかわからない。

 これで見事、民主党は脇役にされてしまった。思わず「またかよ」といいたくなってしまう。4年前の悪夢である。小泉マジックで、郵政民営化か反 民営化かという思いもよらない対立軸の設定と刺客騒動に振り回されて、あの選挙では民主党はメディアの上ではどこかへ消えてしまったのだった。

 結果が小泉チルドレンの誕生であり、3分の2の再議決路線になった。たしか、過熱報道への反省もいわれ、「メディアジャック」という言葉も出ていた。とりわけ面白がって刺客を追ったテレビには、終わって苦い思いがあったはずである。

 にもかかわらず、今回もまた動き出すと止まらない。何も変わっていないかのようだ。4年前とは状況も違うし、カリスマもいない。また有権者もか なり覚めた目で見てはいるようだが、大騒ぎのまま選挙に突入でもしようものなら、またまたメディアは、自民の党内対立に振り回されかねない。

 その効果(支持率アップ)はおそらく、総裁選やまじめなマニフェストづくりなんかよりはるかに大きい。もし意図的に騒動を作り出せたら、相当な 高等戦術だ。議員総会ではなく懇談会になったとき、小泉元首相は「ボクなら(議員総会に)出る。国民に訴えるいいチャンスだ」といったそうだが、やっぱり 彼はわかっている。

 そこで、正義の味方と思われた方が(思わせるだけでいい)勝つ。議員総会に出るのは署名した議員だけではない。署名議員だって多くは麻生体制維 持派なのだから、執行部はそこで堂々と「総裁選前倒し」を否定すればいい話だ。その自信がない、と思われるマイナスの方がはるかに大きいだろう。

 何にしてもメディアというものは、騒ぎがおこれば動く。現に目の前で騒いでいるのだから無視はできないし、また動かないといけない。宿命みたいなものだ。だからこそ、一段高いところから全体像をにらんでいる人間がいないと危ない。

 それでなくても他人の喧嘩は面白いものだ。あの刺客騒動なんか、その最たるものだった。今回の騒動だって、テレビのニュース・ランキングでは、 よほどのことがないかぎりトップにいくだろう。だが、それが生み出す結果を絶えず念頭におくこと。自分たちが考える以上に、メディアの影響力は大きいのだ から。

 今度の選挙には、政権交代がかかる。自民か民主か、指導者と国の形の選択を、有権者が一票で実感できる、事実上初の機会である。アンケート調査でも、「一度変えてみよう」「民主がだめならまた戻せばいい」という声が、はっきりと聞ける。こんなことは初めてだ。

 一方で相変わらず「政権担当能力が‥‥」という人がいる。長年自民にやらせてきて、こんな日本になってしまったーーそれを「担当能力」というなら、そんなものいらない。別の発想が必要だ‥‥いま問われているのは、これだろう。

 だから、だれもが見たい聞きたいのは、その先だ。次元の低い騒動なんかじゃないのだが、メディアは否応なく動く。ジレンマもまた、続くのである。

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