2009年6月14日日曜日

年金モデルは大インチキ


 やれ「100年安心」だの「現役時代の50%支給を約束します」だのと、厚生年金で自民党がさんざん公約していたのが、どうやら嘘っぱちだとわかってきた。これを伝えるモーニングショーで面白い見物があった。

 先に厚労省が出した試算で、2050年に唯一 50%台を維持するという「モデル世帯」が、ほとんど実態がないことを、みのもんたの「朝ズバッ!」が、図解してみせたのだ。絵で見せるというのは、新聞よりはるかにわかりやすい。

そのモデルとは
 (1)20歳までに結婚した同い年のカップル
 (2)結婚生活40年
 (3)40年間夫は会社員、妻は専業主婦、というもの。
 20歳といえば、まず大学は出ていない。妻は専業主婦。見ただけで、「そんな夫婦いるか?」「どうやって食っていくんだ?」と思ってしまう。厚労省が発表したとき、番組でもそう思ったらしく(そのときは見ていなかったのだが)、これをあらためて検証したのだった。

 むろん、専門家に頼んでの試算である。群馬大の青木繁伸教授。やり方はこうだ。
 ① 統計上は、2050年に65歳になる人口(1985年生まれ、現在24歳)は144万2590人。これに、05年の20歳の既婚率をかけて「607.6組」と出た。
 ② 「20歳から40年間会社員」の条件を、「非大学進学率」「厚生年金継続率」に当てはめると、「4.24組」。さらに妻がずっと専業主婦である割合49.5%から、モデル世帯は「2.1組」。
 ③ もひとつ、離婚してないのだから、離婚率25.7%(4組に1組)で修正したので、なんと「1.56組」。144万人中たったの一組半。「50%支給を確保できるのは、0.00021%」と出た。
 しかも番組によると、50%を維持できるのは1年だけで、翌年からはどんどん下がっていくのだそうだ。これはもう、モデルなんてもんじゃない。

 ちょうどその前日(2日)、民主党の厚生労働部会があって、蓮舫が「モデル世帯はどれくらいの割合か」「モデルの意味がないのでは」と質問していたが、厚労省の役人が、「物差しを変えるのは、物差しとして意味がなくなる」と答える映像が出た。こういうのを「いけしゃあしゃあ」という。

 蓮舫も惜しかった。もし「0.00021%」という数字をつかんでいたら、そんな言い訳は通らないし、大いに紛糾して大ニュースになるところだった。新聞も書き立てただろう。

 テレビには、答える役人の顔とナマの声が入っているから、そのバカバカしさがストレートに伝わる。それと、数字を割り出していく過程のフリップの効果。ぼーっと見ているだけで頭に入ってくる。また、みのもんたが、「公務員試験を通った優秀な官僚が、99.999%ありえないケースをモデルに?」などと怒ってみせる。紙のメディアが逆立ちしてもかなわない説得力である。

 かつて、年金問題を扱っている専門家は、異口同音に「厚労省が数字を出さない」とぼやいていたものだ。年金の将来像を解明しようと思っても、数字がないから確たることがいえないのだと。

 その後、一連のしっちゃかめっちゃかで、実は数字を「出さない」のではなく、「出せない状態だった」のだとわかった。しかし、厚労省は相も変わらず、お金がいくらいくら足らなくなるから、掛け金をあげるか、支給を減らすかという話ばかり。彼らは足し算と引き算しかできないらしい。

 そもそもは制度が時代に合わなくなったこと。一日も早く、あるべき制度を考えないといけない厚労省が、足し算と引き算ではどうしようもない。国民的な大論争を巻き起こすしかあるまい。しかしこれが大変だ。

 年金問題を絵解きにするのは、容易なことではない。新聞がよく書いているが、国の負担と個人の負担の割合を表すグラフ(これも厚労省がつくったもの)がせいぜいで、よくわからない。実際の給付との関係では、モデル家庭で語られるーーそのモデルが怪しいというのだから、さあどうする。

 ここはひとつ、テレビの知恵に期待したい。厚労省の発想を離れた斬新で壮大なパノラマと映像で、図解モデルをつくれないものか。選挙の重要テーマでもある。政党マニフェストのアナをみつけるだけでも、有権者には大いにプラスになるだろう。

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