2009年6月9日火曜日

国会図書館のお祭り


 Googleが行っている書籍の検索プロジェクトは、じわじわと日本にもおよびつつあるようだ。私の手元にも出版社からのお知らせが届いて、出版社としては拒否はせず、経緯を見守るという。正しい判断だと思う。事態は動いているからだ。

 前回もちょっと触れたが、これには、ネット情報をどうとらえるのかという根本的な問いがからむ。ネットは危ない世界だが、googleの問いかけを真正面から受け止めざるを得ないのは、将来的にはそういう時代になるだろうと、だれもが感じているからである。

 そのとき、どう著作権を守るか。無料のネット情報との兼ね合いはどうなるのかーー議論はまだ、ひと山もふた山も越えねばならないだろう。

 今国会で著作権法が改正されるが、なかに国会図書館に関する項がある。著作権者の許諾なしで、所蔵資料のデジタル複写ができるという内容で、一足先に補正予算でデジタル化に145億円がついた。例年の100年分というから驚く。

 不勉強で、補正予算にそんなものが入っているとは知らなかった。法改正の趣旨は、古い蔵書はもちろん、新刊でも貸し出しで傷まないうちにデジタル化するということらしい。順調にいけば来春までに国内図書の4分の1がデジタル化されるという。

 が、同図書館の長尾館長も国会答弁で「図書館である以上、本来は無料。しかし、著作権について出版関係と調整する。音楽をダウンロードしたときと同様の仕組みになるか。第3の組織にゆだねるか」といっているように、どう利用させるかは、まだ決まっていない。

 100年分の予算がついた国会図書館はもう、お祭り騒ぎだろう。景気対策のどさくさ補正に、うまくまぎれこませたとほくそ笑んでいるかもしれない。(今回の補正はそんな話ばっかりで、霞ヶ関全体が棚ぼた気分。麻生さんがなめられているわけだ)

 このデジタル化については、googleのほかに、欧州連合がすでに検索システム作りに動いているとか、日本は遅れていたという背景があるらしい。朝日新聞は、google論議についての社説の中で、国会図書館のデジタル化を歓迎していた。

 ここでひっかかった。国会図書館のオープン書架で最大のスペースを占めているのは、新聞の縮刷版だ。もしあれらもデジタル化されて検索できるようになったとしたら、朝日はなお著作権を主張するのだろうか。社説はどうやらこの点を忘れていた。

 もひとついえば、主要紙はすでに縮刷版のデジタル化を終えている。このデータをそっくり国会図書館に提供したら、たとえそれ自体は有料だったとしても、国家の予算と人手と時間の大幅な節約になるのは間違いない。そして、閲覧は無料と。ここはひとつ、新聞協会の出番ではなかろうか。

 新聞の最大の財産は、アーカイブである。紙面になって発行されたとたんに、国民共有の財産でもあるはず。だが、前回書いたように、有料のカベに阻まれて十分に生かされていない。繰り返すが、ネットで検索できないのは、存在しないのと同じ、そういう時代なのである。

 国会図書館のデジタル化が、はからずもこれに風穴をあけることになれば、快挙といっていい。それはまた、google論議にもいずれ関わってくるはずである。

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