前原国交相の「羽田ハブ空港化」発言で、千葉の森田知事が「眠れなかった。冗談じゃない」と怒ってみせたのはお笑いだった。しかも翌日、当の大臣と会見した後は一転、ニコニコして「安心した」だと。
大臣の方は別に、成田をどうこういったわけではなかったが、森田知事は、「羽田に国際線を」というところだけで、カッとなったものらしい。ところが、カメラの前で怒っている知事に、記者団から「勘違いですよ」という声もかからなかった。なんともみっともない話だ。
テレビにいたっては、怒っている絵が撮れればそれでいいのか。さらには、成田紛争のいきさつを流したりして、「あれだけ血を流したのだから」なんてピントはずれもいいところ。
前原大臣のいわんとするところは、羽田の新滑走路ができて、24時間供用になった時点で、「仁川に対抗するハブ空港にしたい」というものだ。これに対応できる空港となれば、地理とキャパシティーからいって羽田しかない。
国内線と国際線という線引きをなくし、便数を増やして着陸料を下げるとか、無駄な地方空港の問題とか、間接的には日本航空の支援も視野に入れた航空行政の立て直し策だ。いわば自民党なしくずし行政の清算なのである。
前原氏は、長年公共事業の洗い直しを野党の目でぎりぎりとやっていた人だから、いざ主管大臣になって一切のデータを手にしたら、これは強いだろう。アナもごまかしも策略も丸見えになるし、意味もわかる。マニフェストの約束ごとだけの大臣じゃない。
それが、道路、河川、港湾、航空、鉄道と間口の広い国交省の大臣になったのだから大変だ。八ッ場ダムから始まって、まあ目下のところはトラブルメーカーみたいにいわれているが、優先順位で事業を見直すという視点でみれば、どの動きも必然である。
国交省だけではない。厚労省、経産省、法務省‥‥みな一斉に動いている。しかもオープンだから、ニュースが多い。副大臣、政務官にも案外「専門 家」がいて、出身も弁護士、役人、税理士、学者‥‥テーマによっては大臣より詳しい人材もいる。派閥順送りと族議員でまわしていた自民党とはえらい違い だ。
もうだれも「政権担当能力」なんていわなくなった。補正予算を削り倒し、概算要求での優先順位づけ、無駄の削除を議員がやっている。役人抜きで自民党議員にそんな能力があるとは、とても思えない。それがわかってきたからだ。
政権担当能力といえば、かつて小沢一郎氏が当時の福田首相と大連立に動いて総スカンを食ったとき、「民主党にはまだ担当能力がない」といったも のだった。その「能力」とは、おそらく「自民党と同じようにやる能力」のことだったのだろう。選挙は「そんな能力要らない」という国民の意思表示だった。
22日にはいよいよ行政刷新会議が動き出した。民間人もいれた議員と副大臣、政務官級がチームを作って予算の無駄を仕分ける。「わが省」といういい方は禁句(仙谷担当相)で、「必殺事業仕分け人」というのだそうだ。
リーダーの1人、蓮舫がテレビで語っていたが、驚いた。1案件1時間として日に最大8件。期間が9日間なので計72案件。3チームあるので、プラスアルファをいれて240件だが、作業は土日なしだという。こんなに働く国会議員いたか?
それでも、全体が3000件だからほんの一部にすぎない。必然的に金額の大きな予算から精査することになるのだろうが、「継続してやれば、法制 度改正の必要も見えてくる」と、やる気満々だった。一気には無理だろうが、特別会計にまで手を突っ込んだら、面白い展開になるだろうなという予感がある。
鳩山政権にはほかにも、普天間問題や日本郵政の社長人事などで、「マニフェストと違うのでは?」という話が次々に出ている。そんな中、FNNが面白い調査結果を出した。電話で全国の1000人に聞いた結果だという。
◆政権公約(マニフェスト)は守るべきか?
必ず守るべき 9%
守れないものが出ても仕方がない 38.8%
とらわれず柔軟に 50.6%
◆ 公約実現のために赤字国債を発行すべきか?
すべきだ 24.5%
思わない 60.2%
◆ 実現すべき公約
子ども手当 61.8%
農家への戸別所得補償 59.2%
高校授業料の無料化 46.9%
高速道路無料化 19.5%
どうやら国民の方がずっと覚めている。変にマニフェストにこだわって理屈を踏み外したりすると、ビシッとやられるかもしれない。勢いづいているのは民主党だけじゃない。
2009年10月26日月曜日
政権担当能力とは?
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